オンライン診療の現状と、新型コロナウイルス感染拡大について
世界各地で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が止まりません。
日々、医療機関従事者は急な環境の変化に追われており、新たに医療の崩壊も課題となっています。
そんな中、今後の新しい医療のカタチとして注目されているのが「遠隔診療」・「オンライン診察」の重要性です。
国内における遠隔診療・オンライン診察の認知度はまだ低いのが現状です。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに今後は幅広く導入されると見込まれています。
そこで今回は、遠隔診療・オンライン診察の特徴、診察の流れなどを詳しくご紹介します。
遠隔診療・オンライン診察のメリット・デメリットについても抑えておきましょう。
遠隔診療(オンライン診療)とは?
遠隔診療(オンライン診療)に関する規則は「オンライン診療の適切な実施に関する指針」にて定めらています。
「オンライン診療」・「遠隔診療」とは、インターネット環境とビデオ通話やチャットを通じて、遠隔で診療行為をすることをいいます。
遠隔医療は「オンライン診療」や「遠隔健康相談医療」を含むオンライン上での医療サービスです。
医師-患者間において、パソコン・スマートフォン・タブレットといったデバイスを経由して、診察を受ける仕組みです。
オンライン診療はオンライン上で診察の予約、問診、診察、処方、会計まで完結するので便利です。
オンライン診療・遠隔診療は、自宅や職場など好きな場所から診療を受けられるようになります。
ビデオチャットを通じて診察が行われるので、スキマ時間にも医療を受けることがでるのがメリット。
オンライン診察後、処方箋は自宅に配送される仕組みが整っているので忙しい方にも便利です。
従来のように、通院する時間と手間を省くことができ、受付・診察・会計の待ち時間が軽減されます。
病院まで遠方の方、高齢者、足が悪くて外出が難しい方、育児・介護中で手が離せない方にも最適な医療のカタチとなるでしょう。
オンライン診療・遠隔診療により、多くの人が手軽に医療・診察を受けられるようになるのです。
将来は、がん診療、高血圧症、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、高尿酸血症の治療など、幅広く浸透するでしょう。
ただし、オンライン診療の初診は対面での診察が必須、疾患の制限といったルールがあるので注意が必要です。
病院やクリニックに通院する従来の診察よりも自由度が高く、次世代の医療として注目されています。
参考:令和元年7月改定「オンライン診療の適切な実施に関する指針」
https://www.mhlw.go.jp/content/000534254.pdf
遠隔医療の種類
遠隔医療には大きく分けて2つのパターンに分けられます。
1つ目は「医師と患者間の行為(DtoP)」、2つ目は「医師と医師間の行為(DtoD)」です。
▽医師と医師間(D to D)
● 遠隔画像診断は専門医が質の高い読影能力を提供する
● 遠隔病理診断は遠隔地の病理医が病理診断を行う
▽医師と患者間(D to P)
● 情報通信機器を通じて医師と患者と繋がる
● オンライン診療では診察や処方といった診療行為をする
● オンライン受診勧奨では医学的診断と受診すべき診療科の勧奨をする
医師と患者間の遠隔医療には「オンライン診療」・「オンライン受診勧奨」・「遠隔健康医療相談」などが含まれます。
医師と医師間の遠隔医療とは、患者の画像診断データの送受信、遠隔で読影をしたりして、医療行為を進めることです。
「遠隔放射線画像診断」や「遠隔術中迅速病理診断」なども含まれます。
▽遠隔医療の種類
①遠隔診療
● スマートフォンやパソコンを通じて遠隔で医師の診察を受ける
②遠隔医療画像診断
● DtoDの形で提供される
● 地方の中規模病院・専門医とクリニックを繋ぐ
● 遠隔で放射線画像の読影とレポートの作成を行う
③遠隔診療・遠隔医療相談
● 医師による診断や薬の処方などを行う
● 医療知識の提供や受診勧奨をする
④遠隔病理診断
● ガンの確定診断に活用される
● 遠隔で病理専門医が病理標本を撮影したデジタル病理画像を元に病理診断・レポート作成を行う
⑤遠隔健康管理
● 遠隔医療相談サービス(医師、その他医療従事者に相談する)
● 重症化予防の指導
● オンラインでの服薬指導
● 健康保険組合が実施する特定保健指導
● 運動・食事指導など健康経営推進をサポートする
⑥遠隔服薬指導・医薬品配達
● 患者さんから処方箋を受け取る
● 調剤薬局の薬剤師がオンラインで服薬指導を行う
● 医療用医薬品の配達
オンライン診療における保険診療と自費診療の違い
ここからは、オンライン診察における「保険診療」と「自費診療(自由診療)」の違いを見ていきます。
保険診療と自費診療ではオンライン診療を受けるまでの条件が異なりますので注意しましょう。
保険診療
「保険診療」とは健康保険や国民健康保険の公的医療保険制度が適用される診療のことをいいます。
保険診療は病気や怪我の治療や予防、健康維持のための診療です。
▽オンライン診療における保険診療を受ける条件
● 初診は対面診察が必須
● 6ヵ月以上の対面診療後にオンライン診療の受診が可能
● 対面による診療の間隔は3ヵ月以内に限る
オンライン診療における保険診療は、診療・治療・薬剤などの価格が予め規定されています。
健康保険法と療養担当規則という法令に基づき「診療報酬点数」と呼ばれる価格が決まっているのです。
保険診療の場合、患者さんが支払う費用は1割または3割となり、9割から7割は公的機関が税金から医療費を負担している形です。
オンライン診療における保険診療は、病院やクリニックが自由に価格を変更することはできません。
自費診療(自由診療)
「自費診療(自由診療)」とは、保険診療では対応していない患者のニーズに応える医療のことです。
自費診療の特徴は病気や怪我の治療とは異なり、美しく豊かな生活を目指すことが目的です。
例えば、二重まぶた整形や脂肪吸引といった美容整形、永久脱毛やボトックス注射といった美容皮膚科などが挙げられます。
他にも、矯正歯科やインプラント治療などの審美歯科、AGA治療、ED治療などもあります。
▽オンライン診療における自費診療(自由診療)を受ける条件
● 初診は対面診療が必須
● 2回目以降は医師の判断によりオンライン診療が可能
● 対面による診療の間隔は医師と相談の上随時行う
自費診療(自由診療)は先程の保険診療とは違い、
基本的に健康保険が適用されない治療です。
病院・クリニックは治療内容や価格を独自に設定できる特徴があります。
ただし、自由とはいえ医療行為として、医師法や医療法に則っていることが基本です。
オンライン診療における自費診療(自由診療)の医療費は個人の全額負担となります。
遠隔診療(オンライン診療)の歴史
オンライン診療は医師と患者間でインターネット環境を整えて、ビデオ通話で診察を受ける仕組みです。
新型コロナウイルスによる感染拡大の予防対策として、遠隔診療の認知度が上がりました。
しかし、今でも対面診療にこだわる医師は多く、導入を留まっているケースも少なくありません。
全国的に遠隔診療(オンライン診察)が導入されるにはまだまだ課題は多いです。
ここからは、遠隔診療(オンライン診察)はどう進展してきたのか歴史を見ていきましょう。
1948年
医師法施行される
医師が診察せずに治療することを禁止(20条)
1997年
厚生労働省の通知にて「遠隔診療は直接の対面診療を補完するものとして行うべきもの」とした。
その後、医師法20条に抵触するものではないと通知した。
2003年
厚生労働省は遠隔診療の適用症例として、在宅の難病や糖尿病の患者などを示した。
2005年
インターネット電話による通信が普及する
2011年
厚生労働省は遠隔診療の適用症例に「在宅の脳血管障害とがんの患者」を追加した
2015年
厚生労働省の適用症例において、患者側の要請があり、対面診療と適切に組み合わせれば遠隔診療を行うことができるとの事務連絡を出した
2018年
診療報酬改定。オンライン診療料等が新設された
2018年度
診療報酬改定により、初めて遠隔診療が算定される
国内における遠隔診療の現状
遠隔診療の始まりは医事システムが普及し始めた1970年代に遡ります。
1996年、当時の厚生省が遠隔医療研究班を結成して
1997年には遠隔診療通知が発行されました。
2015年にスマートフォンが普及し、遠隔治療サービスの取り組みが普及しました。
オンライン診療は過疎地の医師不足を解消すると期待されています。
医療を必要としている患者さんに医療資源を配分でき、子育て・介護中、仕事の時間に制約がある潜在医師の人材も活用できるメリットがあるのです。
しかし、遠隔診療の現状は関心度は高いものの、乗り越えるべき課題が多く、全国的に導入するまでには至っていません。
医療機関が少ない離島や過疎地域での普及が期待されていますが、現状は大都市圏を中心に広がっています。
遠隔診療の重要が高まる中で、医師の診療報酬の問題も早急に解決すべきといえます。
オンライン診療は従来の対面診療と比較して大きな利益に繋がるものではありません。
しかし、オンライン診療のメリットを把握して課題をクリアすれば、適切な診療形態となるでしょう。
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で緩和されたオンライン診療
初診に関しては、遠隔診療での初診やオンライン診療での薬剤の処方は原則禁止されています。
しかし、2020年4月10日、厚労省通達による新型コロナ流行に伴う措置として、初診からの遠隔診療が一時的に可能となりました。
新型コロナウイルスの感染拡大を予防するため、厚生労働省は、初診からオンライン診療が受けられるように一時的な措置を取っています。
患者さんは医療機関から初診でも電話等再診・オンライン診療を受けることが可能です。
受診履歴がある患者さんが別の症状を発症した場合の診療・処方も初診からオンライン診療できます。
ただし条件は、初診時に医師が医学的に可能であると判断した範囲に限ります。
また、ビデオチャットの他にも電話でもオンライン診療を受けることが可能です。
本人確認の保険証は電話口で口頭で伝えるだけなのでやり取りもスムーズです。
パソコンやスマートフォンに慣れていない高齢者も電話から受診できるので便利です。
患者さんはビデオ通話や電話を通じて薬剤師から服薬指導を受けて、薬は郵送してもらえます。
処方箋に基づいた調剤と服薬指導、薬剤の郵送も可能です。
また、患者側だけでなく、厚生労働省による研修をまだ受けていない医師もオンライン診療が可能となっています。
ただし、新型コロナウイルスの感染拡大が終息した時には、医師は研修の受講が必要です。
要注意!新型コロナウイルスのオンライン診療は検査も含めて不可
新型コロナウイルスが疑われている場合のオンライン診察はPCR検査も含めて不可となります。
新型コロナウイルス感染症は風邪やインフルエンザのような症状で発症するため、患者さんに詳しい問診をすることが必須です。
例えば、37.5以上の発熱が続いている、軽度の発熱が4日以上続いている、鼻・のどの症状、腹痛、 頭痛がある場合は、視診と問診だけでは判断が難しいといえます。
遠隔でも問診は十分に可能ですが、診断を確定させるためには鼻咽頭ぬぐい液などを使ったPCR検査が必要です。
鼻咽頭ぬぐい液を鼻の中に細い綿棒を突っ込んで取り出して確認する検査になります。
PCR検査は対面診療でなければならず、遠隔診療では残念ながら行うことができません。
PCR検査キットを患者さんの自宅に送り、自分で採取してもらう方法も考えられます。
しかし、検査の精度が下がるために現状では採用されていません。
遠隔診療によって「新型コロナウイルスにかかっている可能性」を判定するまでは活用されています。
自宅療養中に症状が悪化した場合、別の病気の発症が疑われた場合は早めの対処が必要です。
重症肺炎患者の場合は感染症科医や呼吸器内科医に対面診療してもらう方が安心です。
各都道府県が設置している以下の「新型コロナウイルスに関する帰国者・接触者相談センター」に相談しましょう。
参照:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html
新型コロナウイルスの感染リスクを下げる遠隔診療はOK
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、これまで以上に遠隔診療の必要性が増しています。
継続的な治療が必要となる慢性的な疾患は医師やかかりつけ医による遠隔診療が許可されています。
自宅や医療施設以外の新型コロナウイルスの感染リスクを下げるための診療手段としては有効です。
今後は、新型コロナウイルス感染者が心配な患者さんに対して、重症患者になる前に早急な治療に当たることができるようになるでしょう。
厚生労働省は規制の緩和処置を一時的に実施しており、今後は電話再診・オンライン診療の導入は増える見込みです。
遠隔診療におけるPCR検査の難しさ
遠隔診療は医療従事者の感染リスクをゼロにすることができるため、上手く利用する必要があります。
実際に新型コロナウイルス感染症を診療している医療従事者は自分が感染するリスクを抱えながら診療をしています。
医療の最前線で診療をしている医療従事者は抑うつ気分や不安、不眠といった精神的ストレスが問題視されているのです。
国内においても、新型コロナ患者を診療している医療従事者は大きな精神的ストレスを受けているのが現状です。
医療従事者がウイルスに感染するリスクがなく診療するには遠隔診療の導入は必須といえます。
現段階では対面診療でなければPCR検査をすることができません。
PCR検査は鼻咽頭スワブの検体採取が必要なため、どうしても遠隔診療が難しいからです。
遠隔診療では確定した診断が困難ですが、今後も新型コロナ感染者が増えた場合は遠隔診療にも取り入れるべきとの声が上がっています。
例えば、軽症であれば自宅療養を指示して、遠隔診療をすべきだという意見は多いです。
患者さんが急増(オーバーシュート)した際には病院に病床が足りなくなる可能性も十分にありえます。
重症患者のために医療資源を回すために、軽症の患者さんには遠隔診療で対応する流れになるかもしれません。
しかし、ウイルス感染症は感染後に肺炎へ移行するまでの時間が短いため、高齢者や持病がある場合は
診療の遅れが命取りになるケースも考えられます。
遠隔診療の場合は診療ではなく相談の段階が多く、PCR検査や酸素飽和度の測定、CT・レントゲンなどの検査を取り入れるまでに時間はかかるでしょう。
現段階の遠隔診療は医療機関に受診すべきか相談する段階の「健康医療相談」や「受診勧奨」が中心です。
「健康医療相談」や「受診勧奨」はチャットで体調を伝えて受診すべきか助言するサービスとなっています。
例えば、以下の東京都LINE公式アカウント「新型コロナ対策パーソナルサポート」では新型コロナウイルス関連の症状をチェックできます。
▽新型コロナ対策パーソナルサポート
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/smph/iryo/kansen/line-corona-hogo.html
新型コロナウイルス流行における電話等再診とオンライン診療の算定
日本の保険制度における遠隔診療には大きく分けて
「電話等再診」と「オンライン診療」があります。
「電話等再診」は健康上の電話相談の役割を果たしており、TV電話などを通じて患者と連絡を取る診察方法です。
従来の「電話等再診」には厚生局への届け出や診療計画の書面作成が必要でした。
しかし2020年4月現在、新型コロナ流行における特別な措置として、厚生労働省は緊急対応を行っています。
従来の診療報酬は電話等再診料(73点)のみの算定でしたが、新型コロナウイルスの影響による一時的な措置として、以下の算定が可能となっています。
▽新型コロナウイルス後の電話等再診料
● 電話等再診料(73点)
● 各種医学管理料の代替(147点、月1回まで)
● 処方箋料
電話・TV電話を利用した場合、特定疾患療養管理料などの医学管理料は100点の算定が認められていました。
2020年4月10日の改訂により、医学管理料は147点の算定が可能となっています。
一方で「オンライン診療」はTV電話・ビデオチャットを通じて、定期的なフォロー診察を必要とします。
2018年4月の診療報酬改定に伴い、「オンライン診療」は公的医療保険の適用が認められています。
慢性疾患患者における診察が中心となっており、新型コロナ対策に関わらず、以下の算定が可能です。
▽オンライン診療
● オンライン診療料(71点)
● 情報通信機器を用いた場合の各種医学管理料(100点)
● 処方箋料
遠隔診療(オンライン診療)における患者側のメリット
ここからは、患者側の遠隔診療(オンライン診療)の様々なメリットを見ていきましょう。
※患者さんの状態によっては、初診に対面診察が必要になる場合がありますのでご注意ください。
24時間インターネット予約できる
遠隔診療(オンライン診療)の場合は、スマートフォンやパソコンから24時間いつでも予約可能です。
仕事や家事などで忙しい方も都合の良い時間帯にインターネットから予約できるのがメリット。
初めてオンライン診察の予約を行う際には、1度登録しておくと、次回以降は不要になります。
予約希望日の前日まで予約できるので、日中に電話で予約できない患者さんにも適しています。
希望する日時に受診できる
オンライン診療はインターネットからの予約制となっており、自分で日時を決めることができます。
希望の曜日、時間に診察できるので、遠方の方や子育てや介護で外出できない方には大変便利です。
通院時間と交通費が必要ない
遠隔診療(オンライン診療)では、インターネット環境とスマートフォンやパソコン、タブレットなどのデバイス機器があれば、診療の環境はOKです。
従来のように、通院する必要がないため、病院・クリニックへ行く時間と交通費をカットできます。
仕事や学校が忙い方、日中に病院に通うことが難しい方、怪我をして足を運べない方、医療機関まで遠い地域に住んでいる方にも最適です。
受付での待ち時間が必要ない
遠隔診療(オンライン診療)には病院・クリニックにて診察を受けるまでの待ち時間がありません。
予約後に予約日・予約時間になったらビデオチャットで医師と繋がり、すぐに診察を受けることができるのがメリット。
病院・クリニックの受付にて、保険証と診察券を渡して、順番を待つ必要はありません。
混雑する時間帯を気にせずに、待ち時間のストレスがないのは嬉しいポイントです。
仕事や家事の合間に診察を受けられる
遠隔診療(オンライン診療)の場合は、仕事や家事の合間、ちょっとしたスキマ時間に診察を受けることが可能です。
スマートフォンやパソコンからビデオ通話に接続すれば医師と繋がることができ、場所や時間を選ばないのが嬉しいポイント。
※保険診療の場合は定期的な対面診療や別途算定要件、施設基準がありますのでご注意ください。
院内感染・二次感染のリスクがない
赤ちゃんや小さなお子様が風邪を引いた場合、病院やクリニックへ行くと院内感染や二次感染のリスクが心配な方は多いはず。
オンライン診療の場合は、具合が悪くなった子供を病院へ連れて行く必要がなく、自宅で診療を受けられるのがメリット。
院内感染や二次感染の心配はないのは大きなメリットといえます。
周りの目が気にならない
オンライン診察では、他の患者や看護師と顔を合わせなくて良いのも精神的にラクなポイントです。
精神科やメンタルクリニックの場合は、周囲の目が気になって通院をためらう患者さんも多いです。
通院していることが近所の人や知り合いに気づかれたくないと思う方もいます。
オンライン診療の場合は、ビデオ通話を通じた医師と患者さんとの1対1のやり取りです。
近所の人や知り合い、他の患者さんと顔を合わせることがなく、安心して診察を受けることができます。
引越し後も新しい病院を探すストレスがなく、かかりつけの医療機関で受診することができるのは安心ポイントです。
自宅に処方箋や薬が届く
診察で必要と判断された薬の処方箋は自宅または指定の住所まで配送してもらえます。
自宅近くや勤務地の近くなど、都合の良い場所にある調剤薬局にて薬を処方してもらうことが可能です。
院内処方をしている病院やクリニックの場合は、自宅に直接薬が届くので便利です。
最寄りの調剤薬局へ処方箋を持って行けば、手軽に薬を購入できるのも嬉しいポイントです。
支払いも簡単
遠隔診療(オンライン診療)の場合は医療費の支払いはクレジットカード決済となります。
予め登録していたクレジットカード情報に基づき、キャッシュレスで支払うことができます。
診療後、窓口や精算機で会計手続きや待ち時間をカットできるのでストレスがありません。
遠隔診療(オンライン診療)における医者側のメリット
ここからは、病院・クリニックに勤めている医療従事者側のメリットを見ていきましょう。
診療の質が向上する
患者さんにとっては自宅のリビングや寝室などリラックスした環境の中で診察を受けられます。
そのため、医者は患者とのコミュニケーションがしやすくなり、診察の質が高まるメリットがあります。
ビデオ通話を通じて患者さんの生活の様子を知ることができたり、患者さんとの距離が縮まるのです。
治療の継続率が高くなる
オンライン診察は気軽に受診できるため、患者さんが継続的に治療を受けやすくなります。
これまで通院できなかった患者さんにも医療を提供する機会がグンと増えるでしょう。
子育てや介護で通院が難しくなった患者さん、遠方に引越した既存患者さんも継続した診察が可能になります。
オンライン診察によって患者さんの治療の維持率が高くなるのは医療機関側の大きなメリットです。
医療事務の負担が軽減する
オンライン診察により、従来の医療事務の負担が大幅に減るのもメリットです。
診察の前後の受付と会計までの流れをオンライン上で完結するので便利です。
医療事務の人手不足に悩まされている医療機関の場合は、業務が効率化するでしょう。
未病のうちに適切な医療を提供できる
近年は、生活習慣病による予防医学の大切さが重要視されています。
オンライン診察では病気になってからの診察だけでなく、未病の段階から適切な医療を提供できるのがメリットです。
オンライン診療は時間や場所に関わらず気軽に診察を受けられるので、予防医学にも役立つのです。
遠隔診療(オンライン診療)の患者側のデメリット
遠隔診療はメリットが多いですが、新しい医療のカタチとして懸念される問題点もあります。
ここからは、患者側から見た遠隔診療(オンライン診療)のデメリットを見ていきましょう。
初診は原則対面診療となる
オンライン診療は初診は対面診療が必要となるので注意が必要です。
例えば、花粉症の診療を受診した患者さんが糖尿病の治療を受ける場合も初回となるため、対面診療を受ける必要があります。
しかし、先程も述べたように、新型コロナウイルスの感染拡大における院内感染防止として、初診もオンライン診療を一時的に受けることが可能です。
緊急時に診てもらう場合にはオンライン診察はできず、通院することが決められています。
診療に当たり、医師と患者間の関係において双方の信頼関係と守秘義務が必要です。
医師が患者から必要な情報の提供を求められたり、
医師の治療方針に合意することがあります。
オンライン診療は対面診療を重ねて、医師と患者との間に良好な関係の上に成り立つものです。
※厚生労働省「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(2020年4月7日閣議決定)による
高齢者はビデオ診察の操作が難しい
オンライン診療は視覚または聴覚の情報によるビデオ診察に限られます。
文字、写真、動画のやり取りだけで診察を受けることもできません。
スマートフォンやパソコンに慣れていない高齢者にとっては、ビデオ操作が難しい課題もあります。
画面の大きさによっては、全身または現在治療中以外の場所を診てもらうのは難しいのもデメリットです。
遠隔診療(オンライン診療)の医者側のデメリット
ここからは、医者側から見た遠隔診療(オンライン診療)のデメリットを見ていきましょう。
収入が減る可能性
オンライン診療・遠隔診療では、再診料と処方箋料しか算定できません。
診療報酬が低いため、オンライン診療が主流になると、医師の収入が減る可能性があります。
厚生労働省指定の研修を受講する
オンライン診療を行う医師は、厚生労働省指定の研修を受講する必要があります。
医学的知識のほか、情報通信機器や情報セキュリティ等に関する知識を学びます。
遠隔診療は医師と患者の診察をネットワークを通じてやり取りをするため、医療データのセキュリティ対策は必須です。
プライベートな個人情報にはセキュリティ対策を準備しておくことが大切です。
インフラ整備
本格的に遠隔診療を導入するためにはインターネット環境などの情報インフラの整備が必須です。
例えば、遠隔病理診断や画像診断の場合は安定した通信環境を整備する必要があります。
特に過疎地や離島などは高速ネット回線整備が遅れており、導入までに時間がかかることもあります。
医師と患者間の遠隔診療には、スマートフォンやタブレット端末を用意しておきます。
誤診をする可能性
オンライン診療では医師が行う診療行為の責任は原則、当該医師が責任を負うことになります。
医師はオンライン診療で適切な診断をするための
十分な情報を得ているのか慎重に考えます。
オンライン診察ではビデオ画像や音声からのみ得られる情報で診察をしなければなりません。
対面診療でしかわからないこともあるため、全身の状態を把握することは難しいのです。
重症化の兆候を見逃したり、誤診をする危険性が課題となっています。
遠隔診療における誤診トラブルには早めの対策が求められます。
オンライン診療による診療が適切でない場合には、
対面診療に切り替える判断も必要です。
緊急治療には対応できない
オンライン診療の場合は、予約が必要となるため、
緊急治療には対応できないのがデメリットです。
その他にも、尿・血液検査、血液中の酸素量を測定する酸素飽和度、レントゲン撮影なども不可です。
オンライン診療に必要なもの
ここからは、患者さん側と医師側がオンライン診療をするために準備しておくものを見ていきましょう。
▽患者さんが用意するもの
● インターネット環境
● スマートフォン・タブレット(OSはiOSまたはAndroid)・パソコンのいずれか
● クレジットカード(VISA / MASTER / JCB / AMEX / Diners)
▽医師が用意するもの
● インターネット環境
● パソコン(Google Chrome推奨)
● ウェブカメラ(ビデオ通話用)
● マイク(ビデオ通話用)
遠隔診療(オンライン診療)の登録から予約までの流れ
実際に遠隔診療(オンライン診療)の流れはどのように進められるのでしょうか。
病院・クリニックによって遠隔診療の流れは異なります。
ここからは、一般的な登録から予約までの流れを見ていきましょう。
※アプリケーションや医療機関の診療方針によって診療の流れが異なる場合があります。
ステップ1)アカウント会員登録をする
アカウントは診療予約を行う際に必要となります。
初めてオンライン診療を利用する場合は、アカウント登録しましょう。
ステップ2)基本情報の入力
名前や住所、電話番号など、プロフィール情報を入力します。
オンライン診療では、処方箋は配送先の住所に送られるため、正確に入力しましょう。
ステップ3)クレジットカード情報を入力
オンライン診療での医療費はオンライン上でクレジットカード決済します。
クレジットカード情報を入力して登録しておくと、いつでも決済できるようになります。
ステップ4)ログインする
登録したID・パスワードを入力してログインしましょう。
ステップ5)予約をする
医療機関を指定して、対象の診療科目を選択してください。
「問診票」は診療メニュー、初診か再診選択なのか、予約日と時間などを選択します。問診票に入力し終えたら、予約を確定します。
ステップ6)予約日時にオンライン診療を受ける
インターネットに環境を整えて、予約日にオンライン診療(遠隔診療)を受けます。
医師の準備が整ったら、医師から呼び出しが来ますので予約時間5分前までに待機しましょう。
※デバイス機器にはカメラ・マイク付きのパソコン・スマートフォン・タブレットが必要です。
ステップ7)処方箋が届く
クレジットカード決済後、自宅または指定した住所に処方箋が届きます。
処方箋の原本を最寄りの調剤薬局に持参して、薬を受け取ります。
以上が一般的なオンライン診療の流れです。
オンライン診療には院内での診察(対面診療)と同じく保険診療と自費診療があります。
すべての疾患でオンライン診療を受けられるわけではなく、保険診療の適用になる疾患には限りがありますので注意しましょう。
保険適用の疾患でも、医療機関によってはオンライン診療を導入していない場合もあります。
また、対面診療の保険適応疾患や診療報酬点数の加算と異なります。
自由診療としてオンライン診療するクリニックの場合は診察料はクリニックが定める金額となります。
詳しくはかかりつけ医療機関・クリニックの公式ホームページを確認してください。
オンライン診療を希望される場合は、まずは主治医に相談しましょう。
海外での遠隔診療(オンライン診療)の事例
世界のオンライン診療の現状を見てみると、日本よりも事業を展開が広がっています。
国によって医療制度や事情が異なりますが、今後の新しい医療の形になることは間違いありません。
海外ではオンライン診療の累計調達額1億ドルを超す事例もあり、需要と供給が活発化しています。
▽世界のオンライン診療サービスのトップ3
● one medical(アメリカ)
● Babylon Health(イギリス)
● WeDoctor(中国)
参照:「Global Healthcare Report Q3 2019」(CB Insihts)調べ
累計調達額1億ドルを超えているオンライン診療の上位はアメリカ、イギリス、中国が挙げられます。
いずれも慢性的や医師不足、良質な医療サービスの提供に対する需要が高まっていることが理由です。
ヨーロッパでは他国からの海外投資家からの出資例も多く見られます。
例えば、アメリカの大手VC「Accel」はスウェーデンの「Kry」やフランスの「Doctolib」に出資しています。
サウジアラビアのファンド「Saudi Arabia’s Public Investment Fund」はイギリスの「Babylon Health」に出資を融資しています。
海外投資家から多くの国で積極的にグローバル展開するために必要な資金を調達しているのです。
しかし、中国は世界の流れと異なり、国内IT企業の出資が多く目立ちます。
「Haodf.com」と「Miaoshou Doctor」はテンセント、「JD Health」は京東集団、「Ping An Good Doctor」は平安保険から出資を受けています。
中国のオンライン診療はIT企業から累計で1億ドルを調達をしているのが特徴です。
医療システムの未整備な部分が多いインドネシアやインドなどアジア新興国でもオンライン診療のニーズは増えています。
海外のオンライン診療・遠隔診療の取り組みと現状
ここからは、遠隔診療(オンライン診療)に力を入れている取り組みと現状を見ていきましょう。
2018年2月8日に開催された厚生労働省「情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン作成検討会」の資料から海外の取組事例を見ていきましょう。
アメリカ
世界的にも遠隔診療の導入が勢いよく拡大しているのはアメリカです。
医師にかかることが難しい地域に住む患者さんのために遠隔医療制度が整備されいます。
遠隔診療を受ける患者数は毎年100万人単位で増えており、2020年において約2,000万人の患者が診療を受けました。
アメリカ遠隔医療学会(American Telemedicine Association)によれば、遠隔医療サービスを提供する施設は約5,000施設あります。
医療費が高額なり、医療機関を気軽に受診できない人からの需要が高くなっています。
米保健福祉省は遠隔診療の法整備を進めており、遠隔診療を24時間受診できる体制を整えています。
視聴覚通信技術を用いてX線画像・写真などのデジタル画像・動画を双方向でやり取りしています。
健康促進を目的としたスマートフォンのアプリを使って生活習慣病の管理を行うやり方も人気です。
血圧や血中酸素濃度など個人の健康・医療データを見ながら、遠隔医療患者は健康管理しやすくなっています。
Glooko社の「糖尿病患者遠隔管理システム」は糖尿病患者の自己管理を助けるアプリケーション「Glooko」を開発しました。
血糖計とスマートフォンを連携させて、血糖データをアプリ内に記録することが可能です。
アプリ内に食事の記録や運動記録を残して医師に情報提供を行うことがスムーズになったようです。
医師から健康的な行動を取るようにアドバイスをしたり、リマインダーを送る機能もあり便利です。
全米で30以上の病院を運営しているマーシー・ヘルスシステムの事例では、慢性疾患患者を対象にした遠隔ホームケアを導入しています。
軽度の脳卒中と心臓病患者と医療チームがタブレットを通じたホーム診療を提供しています。
医師は患者さんの家族に血圧を測るように指示したり、体調や薬の服用状況も把握しています。
マーシー・ヘルスシステムによれば、患者の救急室利用率と入院率は30%以上減ったそうです。
アメリカにおける今後の遠隔医療の課題は、公的保険の整備、州間のライセンスの障壁、地方の病院への高速ブロードバンド環境の整備などがあります。
ドイツ・イギリス・オランダ
ドイツ・イギリス・オランダといった先進国のヨーロッパ圏は遠隔診療の導入に積極的です。
特にドイツでは遠隔診療を導入するために医師職業規則が一部改正されました。
ドイツでは約500施設に上る遠隔診療モデル事業が実施されています。
イギリスにおいては、遠隔医療サービスと介護サービスを政府が推進しています。
例えば、糖尿病、プライマリヘルスケア、精神医学、遺伝学、放射線学、病理学、心臓学といった複数の分野で遠隔医療市場が広がっています。
イギリスで遠隔医療のサービスを展開する企業は
スマートフォンのアプリから総合診療医と対面の
遠隔医療システムを開発しました。
アプリ内で医学的アドバイス、処方箋、紹介状、診断書が提供されます。
また、自由診療における肌の状態やメンタルヘルス、関節痛、アレルギー、脱毛といった幅広い分野にも診断を行うことが可能です。
オランダも遠隔医療でビジネス展開に力を入れており、機器とサービスの品質も向上しています。
ヨーロッパでは、2019年に遠隔診療の市場規模は
126億ドルを超えており、今後も拡大する見込みです。
インド
インドは国民に対して医師不足が深刻化しており、医療従事者を確保するためにオンライン診療に力を入れ始めています。
インドでは日本のベンチャー企業であるエムファインがオンライン診療サービスを提供しています。
患者さんはスマートフォンのアプリから体調や症状を入力すると、症状に対応できる医師の一覧から選択可能です。
その後は、スマートフォンを通じて医師と繋がり、
ビデオ、写真、音声、テキストで診療を受けます。
診断後には必要と判断された処方箋が発行されるので、スムーズな診療を実現しています。
アプリではAI(人工知能)を活用して患者さんの病気を予想する機能も搭載しています。
医師側には考えられる病名、追加の問診内容、適切な薬の候補も表示されるのでやり取りがスムーズです。
アプリのAIの精度を高めるために世界の医学紙から機械学習を継続させているようです。
中国
国立研究開発法人科学技術振興機構の研究開発戦略センターによれば、
福建省の大学病院にて、世界初となる5G(第5世代移動通信システムを導入した外科手術にに成功しています。
過疎地において、5G技術により、超高速、超低遅延、多数同時接続の通信環境下における遠隔操作の普及が見込まれています。
将来的には世界トップレベルの専門家の診療を受けられるようになると期待されています。
韓国
韓国における遠隔診療は医師と医師を繋いだ遠隔医療が進行中です。
医師と患者間の遠隔診療においては、医師会に認められず導入されていません。
2017年、政府の保健福祉部は遠隔医療産業の育成のために予算を増やし、「公共医療拡充・医療伝達体制整備」を整えました。
東南アジア
東南アジアはマレーシアとインドネシアにおいて急速な医療インフラが進んでいます。
スマートフォンのアプリから総合診療医とチャットをしながら具体的なアドバイスを求めることができ普及している段階です。
予約は年中無休で24時間対応しており、総合診療医とのビデオ通話、処方箋は最短同日に自宅または職場、地元の薬局に配送されます。
マレーシアでは、国家情報化政策MSCは遠隔医療法を制定して遠隔診療に積極的に取り組んでいます。
シンガポールは2017年、公立病院が医師と患者繋ぐ
遠隔診療を導入を始め、都市と地方の医療格差解消が期待されています。
オンライン診療におけるAIの活用
欧米やアジア諸国ではオンライン診療におけるAIの導入に力を入れている企業が目立ちます。
AIを取り入れると、従来の対面診療よりもより多くの診療が可能になると期待されているからです。
オンライン問診と診療を提供する中国企業「Ping An Good Doctor」はAI技術を活かした開発に取り組んでいます。
患者さんがアプリからオンライン相談を開始すると、チャットボットのAIアシスタントが対応します。
事前診断のため、患者さんの症状・年齢・性別を確認し、その後は専門医が現れて、追加質問や診察を行う仕組みです。
「Ping An Good Doctor」は初期段階でAIによるスクリーニングを実施し、実際の医師に誘導する流れを確立しました。
1日あたり40万回にも上る診断を行っており、ユーザーを増やしています。
同じく中国企業の「Haodf」はAIによるスクリーニング、カルテ管理と皮膚病の識別にもAIを取り入れています。
カルテを多角的に分析するため、診療画像・診断書の記録機能、OCR機能を提供しています。
遠隔医療サービスにAIを取り入れている企業は他にも「Docdoc」、「DocsApp」、「Babylon Health」、「Alodokter」、「Ada Health」などが挙げられます。
問診から診療までの全てをAIにする企業は少なく、
第一段階でチャットボットが利用されています。
遠隔医療にAIを活用するには、膨大なデータの取得が必要となり、人口が多い中国やインドは活かしやすい環境にあるといえます。
中国やインドでもすでに遠隔医療が始まっており、カルテ管理、診断画像にAIを活用する事例は増えるでしょう。
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で海外の遠隔医療はどうなるか?
新型コロナウイルスは世界的に感染拡大が広がる中、米国での感染者は激増しています。
新型コロナの急激な感染拡大により、病院が急な対応に追いつかず、ニューヨークをはじめとする都市の病院は患者さんで溢れているのが現状です。
退職した医療従事者や卒業前の医学生も現場で支援をしていますが、人手は足りていません。
遠隔医療のテクノロジーが完全に形になるまでには
数十年かかると言われてきました。
政府は遠隔医療においてメディケアの適用制限を一時的に解除したため、2005年から2017年にかけて遠隔医療による診察が急増しました。
政府の施策としては、専門分野の対象範囲を拡大したり、医療費の自己負担の軽減が挙げられます。
従来はHIPAA(医療の携行性と責任に関する法律)により、テレビ通話を禁じていましたが、プライバシー要件緩和により、遠隔医療が身近になったのです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、医療機関において遠隔医療の採用が急速に進んでいます。
先駆的な医療システムを取り入れた遠隔医療の急増により、米国の医療業界は新たな事例が見られています。
例えば、緊急遠隔医療において、救急隊員と救急救命士が遠隔医療を初期対応に使用するケースがありました。
新型コロナウイルス対策におけるRapidSOS(ラピッドSOS)の取り組みの一つです。
緊急治療室にて医療提供者と新型コロナ感染が疑われている患者の接触を最小限に抑えるための遠隔システムも採用されています。
患者さんが病院へ搬入する際に、遠隔医療を使って患者の状態を観察しながら、医療従事者の安全も確保しているのです。
プロビデンス地域医療センターはアメリカで最初に新型コロナの症例が発生した場所です。
遠隔監視プログラムを約6週間で早急に構築してICU(集中治療室)患者に対応しました。
新型コロナの影響により、米国の民間保険会社は遠隔医療サービスの自己負担額を免除しています。
州によっては保険会社に遠隔医療をカバーするよう義務付けており、遠隔医療の採用が進むきっかけになるでしょう。
国内での遠隔診療(オンライン診療)の事例
国内においては、新型コロナウイルスの影響が広がる対策として、初診患者に対してもオンライン診療が解禁されました。
日本では医療のオンライン化の流れがようやく動き出している段階です。
厚生労働省は「規制改革実施計画」の閣議決定をして段階的な規制緩和を行っています。
ガイドライン「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、これまでのオンライン医療の要件がより明確になりました。
診療報酬が改定されて、「オンライン診療料(70点)」、「オンライン医学管理料(100点)」が新設されました。
報酬上の評価が明確となり、保険診療の一部になったことで導入しやすくなったのです。
新型コロナウイルス感染拡大の対策をきっかけに日本でオンライン診療が普及するでしょう。
海外よりも遠隔医療が遅れている理由
日本において海外よりも遠隔医療が遅れている理由の一つに継続的に薬を処方する難しさが挙げられます。
現行の法制度においては、既に治療の中で投薬されている薬を継続して処方する場合に限られます。
痛み止めや解熱剤といった頓用薬には対応できますが、遠隔診療中に新たに必要となった場合は薬の処方を行うことはできません。
遠隔診療の場合は、患者さんに処方箋の原本が届き
最寄りの薬局に持っていって薬を処方してもらう流れです。
服薬指導については厳しい規定があり、慎重に考えなければなりません。
今後は規制緩和に向けて、医療特区制度が設けられるなど対策が必要となるでしょう。
その他にも、医療報酬や保険適用などに関する課題も挙げられます。
遠隔診療で得られた診療データはカルテに残らず別にカルテを作成しなければなりません。
今後は録画された映像を記録できる電子カルテや連動サービスが開発されると人件費削減にもなるでしょう。
診療報酬の見直し
国内における遠隔診療の普及の妨げの一因となつているのが診療報酬です。
再診料と処方箋料しか算定できない遠隔診療では
医師の報酬が少なくなってしまうからです。
政府は新型コロナ対策における一時的な診療報酬の見直しを進めていますが、今後も課題は残ります。
インフラ整備の拡充
遠隔診療の普及のために、通信環境などの情報インフラの整備が必須です。
医師と患者間の遠隔診療にはスマートフォン・パソコン・タブレット端末が必須アイテムです。
過疎地や離島では遠隔診療の導入が求められていますが、高速ネット回線整備に遅れが見られます。
医師同士の遠隔病理診断や画像診断を円滑に進めるために通信環境を整備する必要があります。
セキュリティ対策
遠隔診療における医療データはプライベートな個人情報のため、万全なセキュリティ対策が必要です。
厚生労働省では医療機関向けの対応策として「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を発行しています。
遠隔診療サービスは多様化するサイバー攻撃のターゲットになるため、不正アクセスから個人情報や秘密情報を守る重要性について述べています。
プライバシーを確保しながら患者さんが満足がいく医療を提供できるか対策を講じる必要があります。
日本における遠隔診療の将来性
2020年、国内における遠隔医療市場規模の予測は200億円を超える見込みです。
2018年の診療報酬改定により遠隔診療が普及し、遠隔医療画像診断と遠隔病理診断の需要が高いです。
実際に遠隔診療サービスはどんな診療科にも向いているわけではありません。
症状や怪我に関する指標がとれるような診療領域、
診療科目に適しています。
遠隔診療はスマホやタブレットといった通信機器を
使ってアプリをインストールして利用します。
そのため、高齢者の患者さんには環境整えることや使いこなす課題があるのです。
初診から遠隔診療を行うことはなく、継続的に診療が必要な患者さんがメインとなっています。
インセンティブがあるような行動喚起も必要になるでしょう。
病院、医療従事者側としては数ある遠隔診療サービスの中から、最適なものを選択する必要があります。
自分の専門でない診療領域についても対応できるようにすべきか検討することが大切です。
遠隔診療(オンライン診療)の課題と問題点
遠隔診療が普及すると、医療の新しい分野に期待できるだけでなく、懸念される課題や問題点もあります。
ここからは、今後国内で遠隔診療、オンライン診療が普及するための課題や問題点について見ていきましょう。
日本医師会は、動画だけで適切な医療を提供できるのか…という遠隔診療に対して慎重な姿勢です。
例えば、遠隔診療では患者さんの全身の様子や歩行の状況など全体像が見えないことが挙げられます。
情報提供が不十分な状況の場合、若手医師が患者の状態を把握するのも困難となります。
薬を医師の指示どおりに飲んでいるのか確認が難しいこと、治療を止めてしまう患者さんが多いという課題も挙げられます。
遠隔診療は対面の診療と組み合わせて患者さんの行動や服薬状況を記録する必要があるのです。
次世代の医療インフラサービスは患者さんの満足度が高く、医師の生産性も向上することが大切です。
例えば、現在行われている在宅医療においては施設から多くの情報を得ることができるという声が多いです。
医療機関側も患者さんの日々の様子やちょっとした変化も気がつくようになったと言われています。
事前に医師と確認できるので、診療時の情報共有がスムーズなるメリットも多いです。
遠隔診療においても、患者さんの利便性が高まると、治療を途中で断念するケースも減ります。
遠隔診療によって患者さんとの信頼関係が築かれると定期的に患者さんが来院し、多くの患者を診察する機会も増えるでしょう。
まとめ
今回は、新型コロナウイルス感染拡大における遠隔診療・オンライン診療の必要性、国内と海外の現状などを見ていきました。
遠隔診療は厚生労働省は新型コロナウイルス感染拡大対策の一環として、数々の指針を出し、遠隔診療の普及に努めています。
診療報酬改定により、従来の課題であった医療報酬上にオンライン診療料等が記載されたことは大きな進歩といえるでしょう。
今後はICT の飛躍的進歩により、さらに遠隔診療・オンライン診療が拡大すると見込まれています。
あくまでも遠隔診療・オンライン診療は対面診療の原則の上に患者さんと医師の相互信頼に基づいたもであることを忘れてはなりません。